コラム

ルール厳格で返礼品競争に終止符か!? 10月変更「ふるさと納税」

ルール厳格で返礼品競争に終止符か!? 10月変更「ふるさと納税」

こんにちは!大阪事務所の武田です。

今回は、10月よりルールが厳格となった「ふるさと納税」について実際のところどうなの?という方も多いと思いますので、

以下に詳しくまとめてみました。

創設から15年を経てふるさと納税の寄附額は飛躍的に増加

2008年にスタートしたふるさと納税は、生まれ育った故郷はもちろん、お世話になった地域や応援したい地域に寄附をする制度です。返礼品等お得な制度であることも浸透し、今では多くの人が利用し、導入当初の81億円だった全国のふるさと納税受け入れ額が、2022年には約120倍の約9,654億円の規模に成長しました。

https://www.soumu.go.jp/main.content/000897129.pdf

※総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」令和5年より引用

今回のルール改正のポイントは、ふるさと納税の認知度が上がるにつれて過当競争となった自治体間の返礼品合戦です。寄附金獲得のために「還元率の高さ」や「換金目的」を示唆するようにもとれる自治体も増えたため、2019年に返礼品は「地場地産のものに限る」「価格は寄附金額の3割以下とする」「電子マネーや、商品券など換金できるものや資産性が高いものは禁止」といった規制が設けられました。

また寄附を希望する自治体は1年間を指定期間とする総務大臣の指定を受けることとし、返礼品についてのルールなどを守らないと翌年度は対象自治体から外されることもありうると厳格化しました。今回の改正は、このいわば2019年ルールをさらに厳格規定したものになります。

返礼品の内容の見直し、基準の明確化

今回の改正内容について以下詳しく見ていきましょう。

・熟成肉、精米の返礼品は原材料が同一都道府県産のみ認められる。

これまでは加工や製造の主要部分を自治体内で行っていれば返礼品として認められていましたが、今後は熟成肉と精米についてはその原材料も同一都道府県産でなくてはいけません。具体的には、海外から輸入した牛肉を当該地方団体の区域内で熟成させたものや、県外で収穫した玄米を当該地方団体の区域内で精米し返礼品とすることは認められません。

・返礼品の調達費用等の経費総額は付随費用も含めて寄附金額の5割以下にする。

以前から返礼品の調達費用が寄附金額の3割以下、送料や広報費用などの費用も含めた経費総額が5割以下とされていましたが、寄附金の受領証の発行・発送費用、ふるさと納税のワンストップ特例制度の事務費用など、ふるさと納税の募集だけでなく、ふるさと納税の募集を行ったことや寄附金を受領したことによって発生した費用など、すべてを含めて寄附金額の5割以下にしなくてはならないように規定されました。

・他の地域産の返礼品とセット商品にする場合は、地場産品の価値が全体価格の7割以上であること。

地場産品が主たるもの、地場産品以外は付帯するものであることが社会通念上明らかであることが求められ、調達する費用のうち地場産品の価値が7割以上であるかどうかで判断されます。

「ふるさと納税」制度のメリットを享受するために。

・ワンストップ特例制度の利用条件と申請ルール

ふるさと納税で確定申告が不要と、大変便利な「ふるさと納税ワンストップ特例制度」ですが利用には条件やルールがありますので事前に確認をしておきましょう。まず、この制度を利用できる対象者は、確定申告をする必要がない給与所得者であることです。次に、1年間の寄附先が5自治体以内(1つの自治体に複数回寄附をしてもこの場合は1カウントのみです。)であること。寄附申込みをするたびに自治体へ申請書を提出する必要がありますのでご注意ください。

また年末に駆け込みでふるさと納税をする方も多いのですが、申請書や必要書類は、寄附先の自治体へ翌年1月10日必着で提出する必要があります。記入漏れや必要書類の添付漏れ、その他不備等があると受け付けてもらえないこともありますのでこちらも注意が必要です。

・確定申告をする場合は、ふるさと納税の控除額の申告も忘れずに!

上記の給与所得者でも、ふるさと納税ワンストップ特例制度が利用できないケースもございます。例えば、医療費控除がある場合や住宅ローン控除の初年度にあたる場合は確定申告が必要になるため、今回のふるさと納税ワンストップ特例制度は利用できません。

ご自身で確定申告をする場合は、申告書の第二表の「寄附金控除に関する事項」だけでなく「住民税・事業税に関する事項」の「都道府県。市町村への寄附(特例控除対象)」にも、寄附金額が記入等されているか確認しておきましょう。

・住民税からの控除もきちんと確認しよう

ふるさと納税の控除額は、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用した場合は、【全額(2,000円の自己負担分を除く)】が住民税から控除され、確定申告をした場合は【控除額(ふるさと納税-2,000円)×所得税率】が所得税から、残りの金額が住民税から控除されます。

所得税分は還付されるので控除されたことが分かり易いのですが、住民税は全ての収入や控除額が決定した後に支払い税額が決まります。

正しく控除されているかは、翌年5~6月頃に送付される「住民税決定通知書」で確認することができます。通知書の適用欄に「寄附金税額控除額:●●円」と書かれている金額が、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用した場合は【ふるさと納税の寄附金額-2,000円】、確定申告をした場合は【ふるさと納税の寄附金額-所得税の控除額-2,000円】であれば正しく控除されたことが分かります。

ふるさと納税の今回の改正は自治体に求めれられるもので、消費者にとって直接、対応が必要なものではありません。

ただし返礼品が寄附先に限定されることや経費率等のルールが厳格になったことで、世間の関心が高い還元率といったところには少なからず影響があるのかもしれません。ただ、ふるさと納税自体の本来の意義をあらためて理解していただき、正しく利用した上で皆様がメリットを享受していただけるよう本コラムがその一助になれば幸いです。