相続税を払いたいのに預金が凍結…そのとき使える「相続預金の払戻し制度」
こんにちは!
大阪の税理士 グロースリンク税理士法人大阪オフィスです。
未分割の場面では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例がいったん使えず、結果として「まず納める」形になることがあります。
ここまでは理解できても、実務で次にぶつかりやすい壁がもう一つあります。
納税資金を用意したくても、相続預金が凍結していてお金が動かせないという問題です。
「相続税を払うために、被相続人の預金を引き出したいだけなのに…」と思っても、銀行の手続は簡単には進みません。
遺産分割が整うまで払戻しができないケースもあり、期限は迫るのに資金が出せず、焦りが募りやすいところです。
その結果、「銀行から借りるしかないのでは」と考える方も多いのですが、実はそれだけが選択肢ではありません。
今回は、納税資金に困ったときの選択肢として、銀行借入だけでなく、遺産分割前でも一定額を払い戻せる『相続預金の払戻し制度』という手段も含めて、お話していきます。
まずは基本:遺産分割前でも“相続預金の払戻し”ができる
当面の生活費や葬儀費用など、遺産分割を待てない支払いが出る現実を踏まえて、民法等の改正により「相続預金の払戻し制度」が設けられています。制度は大きく2つです。
家庭裁判所の判断により払戻しができる制度
遺産分割の調停・審判が申し立てられている場合などに、家裁の審判を得て、 相続預金の全部または一部を仮に取得し、単独で払戻しを受ける方法です。
※生活費の支弁等の必要性があり、他の相続人の利益を害しない場合などに限られます。
家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度(いわゆる“仮払い”)
口座ごと(定期預金は明細ごと)に、次の計算式で求められる金額について、 金融機関窓口で単独で払戻しを受けられます。
※ただし、同一金融機関(全支店合算)からの払戻しは 150万円 が上限です。
たとえば、相続人が長男・次男の2名で、相続開始時の普通預金が600万円なら、長男が単独で払戻しできる額は 600万円×1/3×1/2=100万円というイメージです。
なお、この制度で払い戻したお金は、後日の遺産分割で「払戻しを受けた相続人が取得するもの」として調整とされています。
「引き出したら終わり」ではなく、最終的には遺産分割の中で整える前提です。
参考: 一般社団法人全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度(ご案内)」(PDF)
“すぐ出る”とは限らない:実務でつまずきやすい注意点
制度は便利ですが、納税資金として使うなら、次の点を早めに織り込むのがコツです。
- 確認に時間がかかることがある
書類提出後、払戻しまでに内容確認等で一定の時間を要することがあるので注意が必要です。 - 必要書類が多め&金融機関で微妙に違う
本人確認書類に加え、概ねの必要書類が示されつつも、金融機関により異なる場合があるとされています。
例として、戸籍関係(相続人全員・被相続人の出生から死亡までの連続したもの等)や払戻しを希望する方の印鑑証明書などが挙げられています。 - 遺言相続など、制度を使えないケースもある
遺言相続のため制度を利用できない場合などがある旨が記載されています。
ここは「使える前提で進めていたら使えなかった」となりやすいので、早めに金融機関へ確認するのが安全です。
それでも足りないとき:銀行から借りる?判断の順番
仮払いは「同一金融機関で上限150万円」なので、相続税全額をまかなえないこともあります。
その場合に「銀行から借りる」という選択肢が現実的になることもありますが、急いで決めるほど条件が厳しくなりがちです。
実務でのおすすめは、判断の順番をこうすることです。
- まず 仮払いで動かせる金額を試算する(口座ごと・金融機関ごと)
- 次に 金融機関の手続に必要な書類と所要時間を見積もる
- それでも不足が出る部分だけ、借入・立替の現実性(返済原資/不動産売却予定/相続人間の精算方法)を整理する
借りるかどうかは、制度で動かせる範囲を確定してからの方が、判断も説明もスムーズになります。
まとめ:納税資金で止まらないために、最初にやること
相続預金が凍結していると、相続税を「払いたいのに払えない」状況が起きます。
そんなときは、まず遺産分割前の相続預金の払戻し制度で動かせる範囲を確認し、必要書類と時間を逆算して動くことが重要です。
足りない場合は、その不足分だけを借入等で補う設計にすると、無理のない資金計画になりやすいでしょう。
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このコラムのまとめ
- 相続預金は、遺産分割前だと相続人単独で払戻しできないことがある。
- 制度により口座ごとに「預金×1/3×法定相続分」、同一金融機関は上限150万円まで単独払戻しが可能。
- 納税に間に合わせるには、書類準備と金融機関の確認時間も含めて早めに動くのがポイント。
