孫養子・甥姪を養子に?資産家に多い「養子×相続対策」ケース別メリットと注意点
こんにちは!
大阪の税理士 グロースリンク税理士法人大阪オフィスです。
「うちも孫を養子にした方がいいんでしょうか?」
資産家の方からこうしたご相談を受けることあります。
- 子どもがいないご夫婦が、かわいがっている甥・姪を養子にしたい
- 長男の子ども(孫)を養子にして、将来の相続をスムーズにしたい
- 実子はいるけれど、家業を手伝ってくれている親族を厚く遇したい
など、「孫養子・甥姪の養子」は、一般の資産家のご家庭でも決して珍しくありません。
一方で、メリットだけで判断してしまうと、後から相続トラブルにつながることも多いパターンでもあります。
今回は、孫養子・甥姪の養子など、一般の資産家に多い『養子×相続対策』のケース別メリット・注意点 をできるだけわかりやすく整理していきます。
孫を養子にするケース:よくある目的とメリット
まずは、「孫を養子にする」ケースとはどういったときなのでしょうか。
実務上、よくお聞きする目的は次のようなものです。
- 長男の子(孫)を後継として厚く遇したい
- 一代飛ばして財産を承継させたい(将来の二次相続を軽くしたい)
- 相続税の基礎控除を増やしたい(法定相続人を増やすことで節税)
メリットとしては、次のような点が挙げられます。
・法定相続人の数が増え、基礎控除が「600万円×1人分」拡大する。
・孫を法定相続人に加えることで、将来の相続でもう一度課税されるボリュームを減らせる可能性がある。
・「跡継ぎ」を明確にすることで、財産を集中的に託しやすくなる。
ただし、ここで押さえておきたいポイントが2つあります。
【1】.相続税の「2割加算」のルール
孫が「被相続人の子の代わりに相続する場合(代襲相続)」を除き、孫が相続人となるとその孫の相続税額が原則2割加算されます(いわゆる「孫養子の2割加算」)。
基礎控除は増えますが、一人あたりの税負担が必ず下がるとは限らないため、トータルで本当に節税になるかどうかは試算が必須です。
【2】.他の相続人との公平感・感情面の問題
- 長男側の孫だけ養子にして、他の子どもの孫は養子にしない。
- 長男本人よりも、孫の方が多く財産を取得する設計になっている。
といった場合、他の子ども・孫から見れば 「なぜあの孫だけ特別扱いなのか」 という不満につながりやすくなります。
結果として、遺留分侵害額請求(最低限の取り分を求める請求)や相続手続きそのものの長期化・対立につながるリスクがあります。
相続税の試算だけでなく、「家族全体から見て納得感があるか」という視点も欠かせません。
甥・姪などの親族を養子にするケース:後継ぎ・承継の視点
次に、甥・姪などの親族を養子にするパターンです。
子どもがいないご夫婦や、実子がいても事業を継ぐ人がいない場合などに多く見られます。
このケースの主な目的は次のようなものです。
- 自分たちの面倒を見てくれる親族に財産を引き継ぎたい
- 将来の身元保証・介護・お墓の承継などを任せたい
- 事業や不動産管理を実際に手伝ってくれている親族に、きちんとした権利を与えたい
といった、「実務・生活面で頼りにしている人に、法的な立場を与える」ことです。
メリットとしては、次のような点が挙げられます。
・法定相続人がいない(または配偶者のみ)ケースで、相続人をはっきりさせられる。
・望まない相続人(遠い親族など)との共有状態を避け、財産の承継先を明確にできる。
・お世話になっている親族へ、感謝の意味も込めて財産を託せる。
一方で、このパターンにも注意点があります。
【1】.他の親族とのバランス
たとえば、複数の兄弟姉妹の中から特定の甥・姪だけを養子にした場合、他の甥・姪、さらには兄弟姉妹本人との関係が微妙になることがあります。
「なぜうちの子ではなく、あの子だけが養子なのか」という不満や、将来の遺留分トラブルにつながりかねません。
【2】.将来の生活設計との整合性
相続時だけでなく、その後の管理・運用・税負担も含めて、その甥・姪が本当に引き継げるのかという視点が必要です。
特に、不動産賃貸や自社株など管理に手間がかかる資産が多い場合は、事業承継のような視点で一緒に検討することが重要です。
ケース別に共通する「失敗しないためのポイント」
ここまで見てきたように、『孫養子』『甥・姪などの親族養子』はいずれも、うまく設計すれば相続・承継の強力な手段となります。
しかし、いずれのケースにも共通していえるのは、「税金だけを見て判断すると、相続全体としては失敗しやすい」ということです。
実務上、失敗を防ぐためのポイントは、次の3つに整理できます。
1.目的を言語化する
まず自分が何を優先したいのかをはっきりさせることです。 相続税の節税をしたいのか、将来の生活や事業を誰かに託したいのか、 あるいは特定の人にどんな役割を期待しているのか。 こうした点を一つひとつ整理していきます。
そのうえで、「なぜ、その人を養子にするのか」を、自分の言葉で説明できる状態まで落とし込んでおくことが大切です。 目的がはっきりしているほど、その後の相続対策や家族への説明も一貫したものにしやすくなります。
2.遺言書・他の対策とセットで考える
養子縁組だけに頼るのではなく、遺言書で「なぜそのように分けるのか」という理由や具体的な分け方をきちんと示したり、 生前贈与や生命保険、家族信託などの手段も組み合わせておくことが大切です。
こうした対策を併用することで、相続人それぞれが事情を理解しやすくなり、結果として納得感が高まり、 将来のトラブルの芽を小さくしていくことができます。
3.家族の顔ぶれを見ながら、専門家とシミュレーションする
孫養子・親族養子は、税額・分け方・感情面の三つ巴です。 「どのパターンが一番良いか」は、資産総額・相続人の人数・家族関係によって全く異なります。
机上の一般論ではなく、自分の家族のケースに落とし込んだ試算とストーリー作りが不可欠です。
まとめ:孫養子・親族養子は「節税+家族の納得」の両立が鍵
孫養子や甥・姪を養子にすることは、相続税の節税や、将来の承継・身の回りのことを託すうえで、有効な手段になり得ます。
しかし同時に、家族の感情や遺留分といった法的な権利が絡む、デリケートなテーマでもあります。
「うちも孫を養子にしたほうがいいのか?」
「甥や姪に財産を託したいが、どんな形がよいのか?」
といった疑問が出てきたときは、一般論だけで判断せず、ご家族の状況に合わせたシミュレーションをしておくことが大切です。
その際には、相続税・資産税に詳しい税理士など、第三者の専門家の意見を一度聞いてみると、選択肢やリスクが整理しやすくなります。
大阪梅田 相続 税理士で専門家をお探しの際は、ぜひグロースリンク税理士法人へご相談ください。
このコラムのまとめ
- 孫養子や甥・姪を養子にすることは、相続税の節税や承継に役立つ一方で、家族間の不公平感や遺留分トラブルの原因にもなり得ます。
- メリットだけでなく、「なぜその人なのか」「ほかの相続人とのバランス」は必ず整理しておくことが大切です。
- 判断に迷う場合は、自分の家族の状況に合わせたシミュレーションを行い、専門家の意見も参考にしながら検討してみてください。
