相続対策の生前贈与が“争続”に?特別受益の基本と揉めないための整え方
こんにちは!
大阪の税理士 グロースリンク税理士法人大阪オフィスです。
「毎年コツコツ贈与しておけば、相続税は軽くなる」
そう思って準備していたのに、いざ相続になると兄弟から言われる一言があります。
「それ、相続分の前渡しじゃないの?」
税金の話はクリアしていても、相続の話し合いが荒れる原因は“民法のルール”にあることが多いです。
特に、生前にもらったお金や不動産をどう扱うかは、家族の受け取り方次第で一気に不公平感が生まれます。
そこで避けて通れないのが、特別受益という考え方です。
贈与税の制度(暦年贈与・相続時精算課税)で「税金がかからない」形にしていても、相続の場面では前渡し(特別受益)として調整するかどうかが別途問題になります。
まずは、この基本から整理していきましょう。
特別受益とは(税金と別のルール)
特別受益とは、相続人のうち一部の人が被相続人から生前に受けた利益(生前贈与・遺贈など)を「相続分の前渡し」とみて、遺産分割の公平のために調整する考え方です。
ここで押さえるべきは、贈与税が非課税でも特別受益として“調整対象”になり得ること。
贈与税の制度(暦年・相続時精算課税)とは別軸で評価されます。
特別受益として見られやすいパターン
特別受益は、相続人の一部が被相続人から受けた利益のうち、遺産分割の公平のために「相続分の前渡し」とみて調整対象となるものです。
実務では、次の3つの形を軸に整理すると理解しやすくなります。
【1】生前贈与
もっとも典型的なパターンは、いわゆる「生計の基礎づくり」に直結する贈与で、たとえば住宅購入資金や不動産の贈与、開業資金、結婚に伴う多額の支度金などが挙げられます。
なお、暦年課税の基礎控除(年110万円)や相続時精算課税の基礎控除(年110万円)を使って贈与税がかからない形で贈与していても、相続の場面では別軸で「前渡し」と評価され、特別受益として問題になることがあります。
【2】遺贈
遺言で「長男に自宅を」「長女に預金を」と指定するようなケースです。遺贈は相続開始時に効力が生じるため、生前贈与ほど“前渡し感”は薄いと思われがちですが、相続人間の不均衡が大きい場合は、結局「公平」の議論が避けにくく、調整や紛争の火種になり得ます。
【3】死因贈与
「私が亡くなったらこの不動産をあなたにあげる」といった、契約にもとづく贈与です。形式は契約ですが、結果として相続開始時に特定の相続人へ財産が移転するため、実務上は遺贈と同様に、公平との関係で問題になりやすい類型です。
もっとも、特別受益になるかどうかは「生前贈与・遺贈・死因贈与のどれか」という形式だけで決まるわけではありません。
実際には、何のために渡したのか(目的)、金額や継続性(規模)、他の相続人とのバランス(公平感)といった実態が重視されます。
そこで次に、実務上「特別受益として見られやすいパターン」を具体的に整理していきます。
特別受益の対象とならない(なりにくい)ケース
一方で、すべてが特別受益になるわけではありません。実務でよく出る「なりにくい」代表例を、誤解の少ない範囲で整理します。
【1】生命保険金(死亡保険金)
原則として相続財産ではなく、受取人の固有の権利と整理されるため、原則として特別受益に当たらないとされます。
※ただし、事情によっては例外的に争点化することがあります。
【2】婚姻期間20年以上の夫婦間の居住用不動産等の贈与・遺贈(いわゆる“おしどり贈与”)
民法上「持ち戻し免除の意思が推定される」仕組みがあり、遺産分割で持ち戻しの対象になりにくい方向に働きます。
【3】相続人以外への贈与・遺贈(特別受益との関係)
特別受益の調整は、基本的に相続人同士の公平を図るための考え方です。
そのため、被相続人が相続人以外(例:孫、内縁の配偶者、子の配偶者、知人など)に生前贈与や遺贈をしていた場合、通常は「特別受益」として遺産分割で持ち戻して調整する対象にはなりません。
※ただし注意点として、相続人以外に渡した場合でも、遺留分の場面では別ルールで評価され、内容や時期によっては「遺留分侵害」の争点になることがあります。渡す相手や金額が大きいときほど、全体の配分や書面(遺言等)も含めて整理しておくと安心です。
対策:書面化で“誤解”を減らす
揉めない設計の第一歩は、「目的」と「証拠」を揃えることです。
何のための贈与か(住宅・教育・事業・純粋な資産移転など)を整理し、毎年の贈与は贈与契約書+振込記録で「誰から誰へ・金額・日付」を確定させます。
この記載は、相続のときに「この贈与を前渡しとして調整しない(=持ち戻さない)」という持ち戻し免除の意思を明確にするためのものです。
「特別受益ではない」と断言するより、「相続分の計算では持ち戻しをしない(持ち戻し免除)」と書く方が、実務上は解釈がぶれにくく安心です。
注意点:遺留分は別ルールで動く
ここが最大の落とし穴です。
たとえ贈与契約書に「特別受益として扱わない」と書いても、遺留分の算定では、相続人への生前贈与が一定の範囲で計算対象になり得ます。相続法改正後の実務では、相続人への贈与について原則10年以内が意識されます。
つまり、「遺産分割の調整は避けられそう」でも、「遺留分侵害額請求で争われる」可能性は残るという構造です。
贈与を進めるほど、相続時の“請求リスク”も同時に設計しておく必要があります。
まとめ
生前贈与は、相続税の圧縮や資産移転の面で強力な手段です。
ただし、相続の現場では「税金がかからない」だけでは足りず、特別受益・持ち戻し・遺留分まで見据えた“家族の納得設計”が重要になります。
贈与の目的を整理し、贈与契約書で意思を明確にし、必要に応じて遺言や保険等も組み合わせる。この順番で整えると、相続対策が「争続対策」に変わりにくくなります。
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このコラムのまとめ
- 特別受益は贈与税とは別ルールで、相続の場面で調整対象になり得ます。
- 贈与契約書に「特別受益として扱わない(持ち戻し免除の意思)」を明記し、記録も整えるのが有効です。
- 遺留分は別ルール(原則10年等)なので、早めに全体設計をしておくと安心です。
