前妻の子にも相続権はある?再婚家庭の相続の基本
こんにちは!
大阪の税理士 グロースリンク税理士法人大阪オフィスです。
離婚や再婚が珍しくなくなった今、相続のご相談でも
「前の奥さんとの子どもにも相続を渡さないといけないんですか?」
「もう何年も会っていないので、今の家族だけで話をまとめたいのですが…」
といったお悩みを伺うことが増えています。
実は、前妻(元配偶者)と、前妻との『子ども』では相続の扱いがまったく違うという点がとても重要です。
前妻には相続権がない一方で、前妻との子どもには今の配偶者との子どもと同じ相続権があります。
今回は、「再婚している場合の前妻の子どもの相続権」について、よくある誤解や注意点を交えながら整理していきます。
前妻の子どもは相続人?基本ルールを整理
まずは、大前提となるルールを押さえておきましょう。
離婚すると、配偶者としての地位はなくなるため前妻には相続権がありません。
一方で、離婚しても親子関係はそのまま続くので前妻との子どもは「被相続人の子」として第一順位の法定相続人になります。
たとえば、次のような家族構成をイメージしてみます。

この場合、夫が亡くなったときの法定相続人は現在の妻1人と、子ども3人(前妻との子2人+現在の妻との子1人)の合計4人です。
民法上の法定相続分は、配偶者が1/2、子ども全体で1/2ですから、上のケースでは次のような割合になります。
| 相続人 | 人数 | 全体に対する割合 | 各人の取り分 |
|---|---|---|---|
| 妻 | 1人 | 1/2 | 1/2 |
|
子ども3人 (前妻の子2人+現在の妻の子1人) |
3人 | 合計 1/2 | 各 1/6 |
つまり、妻が全体の1/2、子ども3人はそれぞれ1/6ずつの取り分を持つことになります。
ここでよくある誤解が、「もう何十年も会っていないから」「養育費も終わったから、相続は関係ないはず」 という感覚です。
しかし、法律上の親子関係を解消しない限りは相続権は残ります。
親のほうが「もう縁が切れたつもり」でいても、相続の場面では前妻の子どもも含めて権利関係を整理する必要がある、という点が最初の重要ポイントです。
再婚家庭でよくあるケースと取り分のイメージ
次に、具体的な数字でイメージをつかんでみましょう。
先ほどの家族構成(妻1人・子ども3人)のまま、夫の遺産総額が3,000万円だったとします。
法定相続分どおりに分けると、目安としては次のような金額になります。
このように、前妻の子であっても、法律上は現在の妻の子と同じように「子」として相続分(このケースでは各1/6)を持つ点が、再婚家庭の相続で非常に重要なポイントになります。
数字だけを見ると一見すっきりしていますが、現実の相続では遺産がすべて現金とは限りません。
よくあるのは、 「自宅の土地建物が2,500万円、預貯金が500万円」 といったように、不動産と現金が組み合わさっているケースです。
このような場合、誰が自宅に住み続けるのか、前妻の子どもにはどのような形で取り分を用意するのか、住宅ローンなどの負債が残っている場合はどう負担を分けるのか、といった点を、相続人同士で話し合って決めていくことになります。
ここで押さえておきたいのは、法定相続分はあくまで「目安となる割合」であって、必ずその割合で分けなければならないわけではないということです。
相続人全員が合意していれば、妻が自宅を引き継ぎ、前妻の子どもには現金や保険金で一定額を支払う、子ども同士で話し合い、特定の子が不動産を取得し他の子にはその分を金融資産で調整する、といった柔軟な分け方も可能です。
ただし、そのためには、遺産の全体像(不動産・預貯金・保険・負債など)を把握しておくこと、そして誰にどの財産をどのような考え方で渡すのかを丁寧に説明・共有することが欠かせません。
特に前妻の子どもは、日常的に連絡を取り合っていないことも多く、情報不足のまま話が進むと不信感につながりやすい点には注意が必要です。
前妻の子との相続トラブルを防ぐためにできる準備
再婚家庭・前妻の子どもが関わる相続で、トラブルの芽になりやすいのは、
「相続人の範囲」と「分け方の考え方」が、事前に十分整理されていないケースです。
- 親側は「前妻の子どもには何も渡さないつもり」でいるが、相続権がある事実を伝えていない
- 今の配偶者や子どもが「前妻の子も相続人になる」と知らないまま手続を進めてしまう
- 誰が相続人になるのか、法定相続分の目安がどれくらいなのかを共有しないまま「なんとなく」話し合いをしてしまう
こうした状況を避けるためには、次のようなステップで準備しておくとスムーズです。
では、こうした相続トラブルを未然に防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
ポイントは、「誰が相続人になるのか」と「誰に何をどのように残すのか」を、生前のうちに整理しておくことです。
以下では、そのために押さえておきたい3つのステップをご紹介します。
【1】.「家族構成」と「相続人の範囲」を書き出す
まず、生前の段階で一度、家族構成と相続人の範囲を紙に書き出してみることをおすすめします。
前妻との子どもが何人いるのか、現在の配偶者との子どもが何人いるのか、養子縁組をしている子どもがいるかどうかといった情報を整理するだけでも、「相続が起きたとき、誰が相続人になるのか」が見えてきます。
【2】.遺言書で「誰に何をどう残すか」を明確にする
次に、遺言書で「誰に何をどのような考え方で残すのか」を明確にしておくことが有効です。
前妻の子どもにも一定の財産を渡しつつ、今の家族の生活基盤を守りたい場合には、
- 自宅は現在の配偶者が引き継げるように指定する
- 前妻の子どもには現金や保険金で具体的な金額を遺贈する
といった方針を、遺言書の形で残しておくことで、相続人同士の話し合いの負担が大きく軽減されます。
【3】.「分けにくい財産」はシミュレーションと専門家との設計を
不動産や自社株などの「分けにくい財産」が含まれる場合には、相続税の負担や将来の資金繰りも踏まえたシミュレーションが欠かせません。
単に「人数で割る」という発想だけで進めてしまうと、思わぬ税負担や残された家族の生活への影響が出てしまうこともあります。
こうした点を考えると、再婚家庭・前妻の子どもが絡む相続こそ、生前の余裕があるうちに、税理士や弁護士などの専門家と一緒に全体の設計図を描いておくことが望ましいです。
まとめ
再婚家庭の相続では、「前妻には相続権がない一方で、前妻との子どもには現在の子どもと同じ相続権がある」という基本ルールを正しく理解しておくことが、何より大切です。
今の家族の生活を守りたいという思いと前妻の子どもに対しても一定の配慮をしたいという思いの両方を大切にするためには、まず家族構成と相続人の範囲を整理し、そのうえで遺言書で誰にどの財産をどう残すかを明確にしておくことが重要です。
不動産や自社株が絡む場合には、税金や将来の生活まで見据えた対策が欠かせません。
複雑な事情を抱えるご家庭ほど、「話しにくいから後回し」ではなく、落ち着いて整理できるうちに一度向き合っておくことが、後々のトラブルを防ぐ一番の近道になります。
相続や生前対策でお悩みの際は、ぜひグロースリンク税理士法人へご相談ください!
お問い合わせはこちらから↓↓
https://growthlink-osaka.com/contact/
このコラムのまとめ
- 再婚していても、前妻との子どもは「被相続人の子」として現在の子どもと同じ相続権を持つ。
- 誰が相続人になるのか、法定相続分の目安がどれくらいかを事前に整理しておくことが、トラブル防止の出発点。
- 家族構成の見える化と遺言書の活用、早めの専門家への相談が再婚家庭ならではの相続問題を大きく減らすカギ。
